展示室 > 常設展 > 微生物の面白い動き-1
鞭毛虫の一人旅
粒子の間を真進する鞭毛虫。真直ぐ伸びた鞭毛の先だけを振りたてながら進みます。時々方向転換するために身体を柔らかくひねりますが、また悠々と進みます。
月井雄二先生(法政大)のコメント
この鞭毛虫の属名は ペラネマ Peranema です。
http://protist.i.hosei.ac.jp/PDB/Im.....
種名は,おそらく Peranema trichophorum ですが,このグループは情報が少なく,種名の判定には自信がありません。
手元の文献には,P. trichophorum 以外の情報がないのですが,
野外には,あきらかにtrichophorumではないと思われるものもいます。
種名を知りたいのですが,今のところ不明です。
採取日:2009/08/08
採取場所:広瀬川A Google Map
突然の方向転換
体 長は約100ミクロン、鞭毛虫としてはかなり大きい。一本の鞭毛は前端で激しく動かし、もう一本は後ろに長く曳きずっている。普段はゆったりと水中を遊泳 しているが、時には小判形で扁平な身体を揺さぶりながら粒子凝集体の中へ進入する。 後の鞭毛を引きずったまま、時々瞬間的に進行方向を変えるしぐさが面白い。
月井雄二先生(法政大)のコメント
この鞭毛虫の属名は アニソネマ Anisonema です。
http://protist.i.hosei.ac.jp/PDB/Im.....
この仲間は種に関する情報が少ないので,種を同定するのが困難な状態です。
多くの場合は,Anisonema acinus のはずですが,実際には細胞のサイズが
大小様々なのと,後曵鞭毛(後方に伸びた長い鞭毛)が柔軟に曲るタイプと
硬く棒のようになっているものがいます。この違いが何を意味するのか,
もしかすると別属なのかも知れませんが,今のところ情報不足でわかっていません。
拝見した動画の細胞は「体長100ミクロン」とありますので,文献に記載された
Anisonema acinusの細胞長(25-40ミクロン)と比べてかなり大きいですね。
となると,これをAnisonema acinusとするのは無理かも知れません。
当面はAnisonema sp.としておく方が無難だと思います。
採取日:2009/07/03
採取場所:広瀬川B Google Map
藍藻と戯れる珪藻
悠々と弧を描いて旅する藍藻。そこへ大小さまざまな珪藻が現れ、すり寄ったりぶつかったり、まるで遊んでいるようです。
月井雄二先生(法政大)のコメント
藍藻の属名は ユレモ Oscillatoria です。
http://protist.i.hosei.ac.jp/PDB/Im.....
ユレモは種類が多いので種名を同定するのは難しいですが,このユレモは形が独特なのでもしかすると,Oscillatoria jovisかも知れません。
http://protist.i.hosei.ac.jp/PDB/Im.....
ただし,jovisは,細胞の幅が3.4〜4.2μmとなっています。この範囲,ないし,それに近ければjovisでよいと思います。
一方の珪藻の方は小型で似た種類がたくさんあるので属名を判定するのも困難です。
ナビキュラ Navicula の一種かも知れませんが断定はできません。
http://protist.i.hosei.ac.jp/PDB/Im.....
珪藻の場合は,細胞を薬品処理して殻の模様を走査型電子顕微鏡(あるいは高倍率の光学顕微鏡)で観察しないと種名はおろか,属名も判断できない場合があります。
(大型種で他にない特徴を持っていれば別ですが,)
採取日:2009/08/08
採取場所:広瀬川A Google Map
クサリケイソウの不思議
沢山の細い珪藻がつながり伸びたり縮んだり。そのスケールの大きい動きにつれて、周りの珪藻たちが群がったり離れたり、時には周りの結晶や粒子の凝集体も位置を変える。縮んだときは何本も横並び、伸びた時はクサリの形。動く方向も前後左右に自由に向きを変える。
月井雄二先生(法政大)のコメント
これはたしかにクサリケイソウ Bacillaria ですね。
http://protist.i.hosei.ac.jp/PDB/Im.....
種名は,多くの場合,paxillifer(またはparadoxa,注)とされますが,他に種がいるかどうかは情報不足でわかりません。
注:やや古い文献では皆 B. paradoxaとなっていますが,ネットにある珪藻のサイトでは
paradoxaは異名で,最新?の名前はpaxillifer であるとしています。この動画にある種も Bacillaria paxillifer としてよいのではないかと思います。
採取日:2009/07/02
採取場所:広瀬川A Google Map